ハル・ハートリー監督へのインタビュー(2014年2月/TOKYO--NY)


 

Q.1)

 2014年、東京や大阪など多くの都市で、ハル・ハートリー監督の新作と名作が映画館で観れる事に

 なり大きな反響があります。日本には多くのファンが居るのだと再確認しました。あなたの映画は

 もちろんヨーロッパなどでも人気がありますが、特に日本の観客があなたに抱く期待と興味は大き

 なものがあるように思えます。そのあたりどうお考えですか?

 

Not really. Perhaps it is because they offer something different than other American films.

Something that was influenced by European and even Asian cinema when I was learning how to make films.

In the 90's I remember it seemed like Japanese audiences liked the intelligent romantic craziness of the characters.

良く理由は解りませんが、おそらく、他のアメリカ映画とは異なった作品を求めているのではないでしょうか。

私の映画の創り方は、ヨーロッパやアジアの映画から多く影響を受けていますので、その点が独特なのかもしれません。

 

 

Q.2)

 『meanwhile』の主人公、ジョセフは器用で人柄も良い。強固な意志を持っているようにも見える

 が、しかし完全ではない。あなたのかつての映画のキャラクターの成長した姿にも見えるが、現代

 社会においてジョセフが立ち向かう相手、あるいは問題点とは何でしょうか。

 

Joe's problem seems to be that he lacks the fighting spirit but is certainly strong and tough.

He would be more successful if he was less considerate of people.

ジョセフは闘争心に欠けているようにも見えるけれど、実は、強くてタフな人間です。

人助けをやめれば、もっと成功するでしょうね。

 

 Q.3)

 俳優、D.J.メンデルはおそらく今回の作品で初めて日本の観客が目にするのではないかと思います。

 キャラクターがぴったりなのですが、脚本は彼のイメージに沿って書かれたのでしょうか。彼を起用

 した意図について、また俳優としての魅力について教えて下さい。

 

I did write the script for DJ Mendel.

He has appeared as supporting characters in many of my films and has been an important part of the theater I have made.

He is the best physical actor and voice actor I have worked with.

And that is what I aim to do more an more—weave the dialogue and physical activity together so close that they become a kind of duet.

DJ does this better than any actor I have worked with. Parker Posey is another one.

彼のために脚本を書きました。

私の映画には脇役として何度も出演していますし、舞台を演出した際にも出てもらいました。

彼は、役者としての動きも非常に上手く、台詞回しも優れていると思います。

ですから、彼の出演シーンや台詞が増え、今回は私とデュエットするように映画を創りました。

 

 Q4.)『meanwhile』では他にDanielle Meyer, Anais Borckらフレッシュな女優が起用されていま

 す。女優をキャスティングする際に心がけていることは何でしょうか。

 

First, they have to be good at memorizing dialogue. Then they have to be able to move gracefully.

Then they have to have some kind of interesting thinking process that gives their expressions some degree of mystery.

まず、台詞の覚えが良いこと、そして動きが上品であること。

また、面白い考え方をすることも重要です。そうすると、芝居にミステリアスな雰囲気が出てきますので。

 

 Q.5)

 『アンビリーバブル・トゥルース』『シンプルメン』『愛・アマチュア』も美しいデジタル・リマ

 スタリングが施され、新鮮な感覚でスクリーンで観ることができます。試写では「古さを感じさせ

 ない」との声が多くありましたがその秘訣について教えて下さい。

 

We just tried to let the film look like it did when it was originally made.

Some distributors are not happy because they are 25 years old and are not used

to seeing films made in the 90's and earlier that have grain and that weave a little and which had taped splices!

They tell me the re-mastering is unprofessional!

Anyway, we just fixed what needed to be fixed. Sometimes the old inter-positive had a piece of the emulsion flake off.

We would go in and fix that. But otherwise we just took good care of the inter-positives over the years.

私は、映画が制作された時となるべく近い状態にしたいと思っています。

ただ、多くのディストリビューターは、この仕上がりに不満のようです。

90年代以前に創られた映画は、多少肌理が揃っていなかったり、歪みがあるのが当然です。それがフィルムで撮影したと言う味だと思っています。

マスタリングが失敗している言われると心外です。

とにかく、出来る限りの修正は行いました。

時間の経過したインターポジには、白濁した感じが出ることがありますので、それは直しました。

あとは、インターポジの保管状態を良く保つことを気をつけています。

 

 Q.6)

 人間の罪と贖罪、そして犠牲といったモチーフは監督の全ての作品の物語に作用していると思いま

 す。主人公達が追い求める愛や希望にはキリスト教的な倫理観が基本にあるのでしょうか。

 

I do use the Christian ethical tradition as a reference often.

But the soul of my stories are probably more ancient Greek philosophy.

Stoicism and stuff like that. Pre-christian.

確かに、私はキリスト教的倫理観を映画の中に多用しています。

でも本当のところ、ギリシャ哲学に由来していると言った方が良いかもしれません。

ストア哲学(禁欲主義)や、キリスト教以前の哲学です。

 

 Q.7)

 2005年から2009年まで、ベルリンで過ごしておられましたが、ポッシブル・フィルム設立と

 同時期でしょうか。ベルリンに移住した理由と活動の内容は。

 またベルリンでの生活から得た創造上の影響はありますか?

 

I was awarded a fellowship to live and work at the American Academy in Berlin for four months.

I came to like the city and the theater and dance scene that was happening there.

I was also working on the staging of an Opera by the Dutch composer Louis Andriessen, la Commedia.

It was also the middle of the George W.Bush years in the US. The nation had just re-elected him.

And I could not stand to be around my fellow Americans anymore.

That very much effected my writing and production of Fay Grim (2007) which was mostly shot in Berlin, Paris, and Istanbul.

Otherwise, I used those years in Berlin to practice the kind of filmmaking that resulted in Meanwhile.

I completed a group of five short films (called PF2) in those years.

ベルリンのアメリカン・アカデミーで4ヶ月間仕事をする基金を得たので、渡独しました。

そして、ベルリンと言う街そのものや、劇場、ダンス公演などが大好きになりました。

その間、オランダ人作曲家のLouis Andriessenが創ったla Commediaと言うオペラの制作にも従事しました。

ちょうどアメリカではジョージ・ブッシュが再選された頃で、アメリカに居たくなかったのも事実です。

ベルリンでの生活は、私の創作活動にも多くの影響を与えてくれました。正に、Fay Grim (2007)はベルリン、パリ、イスタンブールで撮影しました。

また、Meanwhileは、ベルリン時代の経験が多く反映されていると思います。

ベルリンでは、PF2と呼ばれる短編を5本制作しました。

 

 Q8.)

 インターネットが普及したことにより、あなたの映画作りに変化はありますか。日本では若い映像作

 家は一時、ネット上で作品を発表し、収益を得られるのではないかと期待したが相変わらず苦戦を強

 いられています。ゴダールが予言したとおり、映画は映画館にまで行かなくても好きな時に部屋に運

 ばれて来る時代になりました。映画作家にとってネット社会は有意義なものでしょうか。

<翻訳中>

 

 Q.9)

 2014年、新作『ネッド ライフル』の製作がスタートするというニュースがあり、今回の4作品公開

 と合わせてハル・ハートリー監督に対する話題が盛り上がってきました。

 『ネッド ライフル』は『ヘンリー・フール』(97)『Fay Grim』(06)の続編と言われていますが、

 一体どのような物語が展開されるのか、少し教えて頂けませんか。

 

The third and final chapter of the henry Fool / Grim Family movies.

They began with Henry Fool (1996) and continued with Fay Grim (2007) and will now finish with Ned Rifle.

Almost twenty years with the same actors playing the same roles as time goes on.

In this one, Ned (the son of Henry and Fay) is now 18 and he wants to find and kill his father for having messed up his mom's life.

1996年のヘンリー・フール、2007年のFay Grimに続く、第3弾、最終章です。

同じ役者が、ヘンリー・フールから20年後に同じ役を演じます。

Ned、ヘンリーとフェイの息子が18才になり、母親の人生をメチャクチャにした父親を探し出し、殺そうとする話です。

 

 

Q.10)

 仕事以外でのニューヨークでの生活とはどのようなものでしょうか。ニューヨークという街につい

  て、そして今、最も興味を持っている事柄があったら教えて下さい。

 

Just the place I call home. I know it is famous and historic too.

But mostly I enjoy how it changes constantly.

ニューヨークは、人気のある観光地で歴史もある街ですが、私にとっては家のある場所。

変わり続ける姿をとても楽しんでいます。


 

戻る