■「マルグリット・デュラスのアガタ」とは・・

デュラスが生涯抱き続けた次兄への愛の記憶が結晶化された作品。
「ガンジスの女」(72〜73年・日本未公開) と同じ浜辺で撮影された本作品はデュラスの最後の
パートナー、ヤン・アンドレアの初出演作でもある。
冬の海辺、誰もいない別荘の一室で、愛し合いつつ別れなければならない兄妹の対話が続く。
海、廃墟、幼年期を象徴するブラームスのピアノ曲。アガタとは妹の名前であると同時に二人が幼
き日々を過ごした別荘の名前でもあり、何度もその名前を口にするたび土地の記憶と愛の記憶とが
混じり合う。今日に至るまで愛し合い、禁じられた情熱に身をゆだねた兄妹。二人の瞳は共に犯し
た罪の想いを秘め、互いに相手を失う恐れにおののく。
情熱と別離。持ち続けることの出来ない、表現しようとしても出来ない、演ずることの出来ない、
心のときめき<形>に復元することの不可能さ。本作の登場人物がマルグリット・デュラスの声を
かりて語るそれは・・・<情欲のときめき>である。
モノローグで語られる独特のスタイルによって、ノスタルジーは高揚され、心の傷は深まり、狂気
の情熱は昇華されていく・・・。
まさしく<幸福>についての映画である。

【ものがたり】


30歳前後の彼らは 母親の亡くなった8ヶ月前以来、久しぶりに冬のヴィラ・アガタで出会う。
妹・アガタは20歳のころに結婚し、子供もいるが、今彼女には23歳の恋人がいる。
アガタは翌朝4時にここを旅立ち、おそらく兄と永遠に別れようとしている。
アガタと兄は互いに性的に愛し合うようになった頃の思い出を語り合う。

アガタは自分の生まれた年に、両親の買った海辺の別荘ヴィラ・アガタで10代の数年間の
夏休みを過ごした。彼女が18歳の誕生日を迎えたある年の7月、大学卒業を控えた
23歳の兄が久しぶりにやってきた。
兄には婚約者がいた。

アガタと兄の隣り合った寝室は互いに音が筒抜けだった。
兄は女達を連れ込んでは快楽の声をあげさせ、アガタもまた兄のひとりとの
セックスを体験した。その翌日、いつものように全裸で寝ているアガタを兄が見つめ、
その横に身を横たえた。その禁じられた性的体験は、黒いピアノの奏でる
あのワルツの旋律のように、今のふたりにとりついている。

 

Agatha ou Les Lectures illimitees

原題;AGATHA
撮影;ドミニク・ルリゴール、ジャン=ピエール・ムーリス
音楽;ブラームス
編集;フランソワーズ・ベルヴィル
キャスト;ビュル・オジェ、ヤン・アンドレア
声の出演;マルグリット・デュラス、 ヤン・アンドレア

監督・脚本;マルグリット・デュラス
原作;「死の病・アガタ」(朝日出版社)
ベルテモン、I.N.A.、Des Femmes Filmest 作品
配給;JVD 協力/イデア
35mm 1981年(仏) 90min

 

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