「食べ物は腐りかけが一番美味いというが、
まさにこの作品はバブル景気が腐りかけたほんの一瞬をとらえた
豊潤な香りがする貴重な記録である」
村上賢司(映画監督・テレビディレクター)


2014年劇場リバイバル公開決定
TOKYO DECADENCE / TOPAZ トパーズ

「トパーズ」新宿ksシネマでの2月16日(日曜)上映前に
当時のスタッフによるトークショウを行います。(21時くらい)

予告編/YouTubeにLink

衝撃的な公開から23年!ニュープリント35mmによる上映が決定しました。是非この機会にどうぞ!

文壇を揺るがした小説「限りなく透明に近いブルー」で第19回群像新人文学賞、第75回芥川龍之介賞を受賞し、衝撃のデビューを果たした村上龍。本作は自身の希望により「コンパクトで小回りの利くスタッフ編成」で撮影された監督作の第4作目。バブル期を向かえ、沈みゆく日本=東京を背景に〈価値とは何か?〉を映した過激な問題作。社会の歪みである主人公のコールガールを通して、今日も当てはまる現代社会の欲=情報・金・過剰な快楽が映しだされる。出演は、大野一雄舞踏研究所で舞踏を学び、後にハル・ハートリー監督夫人となった二階堂ミホ、写真家・加納典明、ポストモダン小説の騎手・島田雅彦、現代美術作家・草間彌生、テーマ曲のアレンジ演奏を坂本龍一と、今では不可能なキャスティングで異常な輝きを放っている。

【ものがたり】
アイはSMクラブで客の求めに応じてホテルに出向くコールガール。ある日、地下道で出会った占い師に薦められるまま
トパーズの指輪を買う。毎夜、歪んだような世界の中で様々な男達の間を彷徨うアイ。
そんな中、美しくプライド烽「サキというSM嬢に出会う。「スーパーマンのようになれる」という
不思議なクスリを手渡され、アイはかつて憧れ、恋をした男に会いに行く決心をする。
高級住宅街の公園にたどりついた彼女ははかない幻を見る。


【劇場情報(タイムテーブル等詳細は各劇場HPでご確認下
さい】

上映期間 上映劇場/HPリンク

2月1日(土)〜2月20日(木)
連日21:00より
新宿K'sシネマ
「トパーズ」新宿ksシネマでの2月1日(土)初日には
B1ポスターを先着10名さまにプレゼント
 
2月22日(土)〜
吉祥寺バウスシアター
3月8日(土)~3月21日(金・祝) 大阪 第七藝術劇場
4月4日(火)~4月8日(金) 神戸映画資料館
4月12日(土)〜18日(金)
レイトショーとなります
名古屋シネマテーク

バブルの残照の中、新しい価値を求めて彷徨う<予告編/YouTubeにLink>女性を透して描く時代の先端、そして終焉。

【キューバ音楽の導入を始め、意欲的な試みで様々なタブーに挑戦!】

映画『TOKYO DECADENCE TOPAZ』は1991年に公開されました。言うまでもなく村上龍によるベストセラー小説の彼自身による脚本・監督での映画化です。村上監督はそれまでにデビュー作『限りなく透明に近いブルー』(1979)などの映画に取り組んできた”異業種監督”のはしりとも言える存在です。それまでの大所帯のスタッフによる大作をコントロールする困難さを感じた村上監督は、この作品において、16mmキャメラを使った、コンパクトな制作方法に挑戦しました(上映用に35mmプリントに変換)。部屋の内部や街中での撮影、夜明け前の一瞬の光のビル街、対象に肉薄する描写にその威力は存分に生かされ、時代を切り取る衝撃的な内容、異色のキャストも話題を集めたことは言うまでもありません。東京(銀座シネパトス)で公開されるや、大ヒットとなりました。アメリカ、ヨーロッパなどでも上映が行われました。テーマ音楽には村上の盟友、坂本龍一がヴェルディのオペラから美しい旋律を新たに録音、提供。そして村上監督はこの作品の制作中にキューバとの運命的な出会いをし、さっそくキューバ音楽をサウンドトラックに採用する事を決めます。当時まだキューバ音楽は一部の愛好家のものでしたが、毎年の音楽イベントを自ら催行するなどの積極的な行動力で今では広く知られるようになったことは特筆に値するでしょう。

【異色の出演者たち】

原作ではハード且つ異常なシーンの連続が展開されているため、主演のSM嬢アイ役は既存の有名女優の起用は無理と判断されました。女性誌アンアン、情報誌ぴあ、などに一般公募広告が掲載され、オーデションが行われました。そこで見つかったのが二階堂ミホ(現・美穂)でした。それまでの彼女は大野一雄のもとで舞踏を経験などしていたのですが、本作品で監督・スタッフ全員一致で主役に抜擢。それまでに準備されていた脚本(オムニバスだった)は全面的に彼女のイメージを加味して書き直されました。さらに監督の自由なイメージで様々な出演者にオファー、今では実現不可能とも思える出演者が実現しました。村上氏の友人で尾崎豊などを育てた音楽プロデューサー・須藤晃氏が「写真」「テレビ」の中に出演していたりといった場面もあります。

出演/二階堂ミホ(アイ) 天野小夜子(サキ)
加納典明 島田雅彦 三上寛 瀬間千恵 草間弥生(占い師)

【リバイバル上映にあたっての村上龍監督からのコメント】

わたしは今でも、気分が落ち込だときなどに、あるシーンを見ることがある。
女王様サキが、主人公のSM嬢アイを豪壮な自宅に招待し、料理やワイン、
それにさまざまなドラッグを振るまったあと、バイブレーターをマイク代わりに持ち、
『恋のバカンス』を歌いながら踊る、というシーンだ。
『恋のバカンス』は60年代を代表する歌謡曲の傑作であり、天野小夜子演じるサキの演技とダンスは、
いろいろな意味で、80年代末の日本社会の爛熟と頽廃を象徴している。
高度成長まっただ中の60年代、一直線にバブルに向かう80年代末、
その組み合わせは、「決して戻ってこないもの」「絶対に取り戻すことができないもの」の存在を、
甘美な感傷として、わたしに思い起こさせるのである。

――村上 龍 (2013年、冬)

【むらかみ・りゅう/PROFILE】1952年長崎県佐世保生。麻薬とセックスに溺れる若者たちを描いた「限りなく透明に近いブルー」で現代日本文学を席巻。カウンター・カルチャーから出現した時代を代表する作家である。代表作に「コインロッカー・ベイビーズ」(80)「69 sixty nine」(87)「ラブ&ポップ」(96)「13歳のハローワーク」(03)「半島を出よ」(05)など多数。監督作品に「だいじょうぶマイ・フレンド」(83)「ラッフルズホテル」(89)「KYOKO」(96)など。2010年には電子書籍を制作・販売する新会社G2010を設立、2013年は電子コンテンツブランドとして「村上龍電子本製作所」を立ち上げた。テレビ東京の「カンブリア宮殿」に出演中。

【スタッフ】

エクゼクティブ・プロデューサー 多賀英典
原作・脚本・監督 村上龍
プロデューサー 永田陽介 平尾忠信 鈴木愛孝
テーマ音楽 坂本龍一(ヴェルディ『ドン・カルロ』より)
撮影・照明 青木優 長井和久
助監督 片嶋一貴 
制作主任 竹平時夫(シネマンブレイン)
録音 臼井勝 サウンドスーパーバイザー 鈴木昭彦 
仕上げ 青木綾子 井口奈己
企画協力 成田尚哉


 

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